2014年12月14日

エボラ出血熱は昔からベナンに存在していた!?

2014年8月上旬、エボラ出血熱疑い患者がポルトノボで出たと言うことで、JICAベナン支所より隊員宿泊所へ退避することが命じられ、同月下旬に帰任許可が下りるまで、一カ月弱コトヌーで過ごすこととなった。このエボラ出血熱に関しては、ポルトノボの疑い例発生直前までは、現場の人々はエボラなんて全く聞いたことのないような顔をしていたのに、疑い例発生の直後になると、とたんに「エボラ予防法」に関する情報を街中の人が―全ての人が、と言っても過言ではないほど多くの人が―入手していた。聞くと、ラジオやテレビ、それに家族・友人・知人間の伝聞によって急速に拡がったようだ。この「予防法」に関しては、情報発信から半日足らずで、迅速にかつ正確に街中に拡めることを可能にしたベナン社会の情報伝達網に驚くとともに、その具体的な予防方法にもだいぶ驚かされた。予防には、温かいお湯と塩と生玉ねぎで身体を洗うと効果があるという。なんでもギニアのある医者が言いだしたとか言い出していないとかで、とにかく街中の人が信じ、その予防法を実践していた。


そんな人騒がせなエボラ出血熱だが、実は昔からベナンにも存在していた、という話を耳にした。

エボラ、エボラと聞きなれない名前をつけるから同定できなかったのだが、よくよく症状について聞いてみると、ナゴ語でogodoと呼ばれる病気のことに違いない、という。ogodoは昔からベナンに存在していて、その病気になったものは森の中に隔離され、呪術を伴った伝統的治療師(現地人による仏語表現ではcharlatanもしくはvisionnaire。「ロワイヤル仏和中辞典」によると前者は「いかさま治療師」、後者は「夢想家」「見神者」との訳語があてられているが、現地では決して否定的な意味では用いられておらず、肯定的な意味での伝統的治療師や呪術師、占い師の総称である。)による治療を受ける。治療師は、占いによって使用する煎じ薬を決め、治療を開始する。または、草木が治療師に直接語りかける(!)ことによって煎じ薬が見つけることが出来る場合もある。占い、もしくは草木からの直接の働きかけによって、患者に使う煎じ薬の種類と場所(採取場)が判ると、治療師は裸で採取しにいく。その間、誰にも見られてはいけないため、真夜中零時や1時に藪に入り、煎じ薬の素となる草木を探す。真夜中なので藪は暗闇であるが、治療師には既にどこに目的の草木があるかわかっているため、一直線にその場に向かう。その後、その煎じ薬で治療をする。

治療が終わったら、使った煎じ薬や患者の来ていた服(布)はすべて森の中に埋められる。全身の毛を剃り、爪を切り、それらも土に埋める。完治したら、すべて新しい布で服を作った後、家族のもとへ帰ることが許可される。無事に家族の下に戻った患者は、山羊などを購入し、儀式(セレモニー)を行う。儀式をすることで、それ以降、家族は同じ病気にかからなくなる。


これは、にわかに信じがたい話であるが、個人的には少なからぬ真実を含んでいるように思える。患者を森に隔離するところや(患者の体液が付着していると思われる)服を土に埋めて触れないようにするところは、エボラ対策(患者の隔離、体液に触れない)との共通点を感じないだろうか。

国際機関によると、エボラ出血熱は、1986年にコンゴで発見されたと言われているが、この「発見」はあくまで先進合理人がその病気に「出会った」という意味で、コロンブスのアメリカ大陸「発見」と同じ意味であるように思えてならない。エボラウィルスの保有動物は、はっきりとした結論は出ていないものの、野生動物(コウモリ等)ではないかと言われている。もし仮にそれが正しいとすれば、日常的に野生動物を食べることの多いアフリカ人の中に、1986年以前に、まだ発症確認されていない国や地域でエボラ患者が出ていたとしても不思議ではない。また、たとえエボラ出血熱のような患者が現れたとしても、伝統医療や呪術への信頼が厚いアフリカ社会においては、近代医学や科学を用いて病気の原因(ウィルス)の解析をしようとする発想は出てこないだろうし、それを探ろうとしたとしても先進合理人たちが認めうる検査をする技術や設備もないだろう。そうなると、土地の人の噂や言い伝えの形で症例が残ることはあっても、記録としては残らない。


先人の蓄積を侮るなかれ。煎じ薬の知識に関しても、西洋医学によってその効果が科学的に実証されていないだけで、中には効果的なものも含まれている、というのが個人的な実感だ。アフリカ社会では、幾代も世代を重ね、知恵や知識を蓄え、後世に伝えてきた。近代西洋医学のやり方とは異なるが、薬(煎じ薬)や病気の「研究」も行われており、それらの研究成果は秘密裏に―私の接しているアフリカ社会は秘密社会と言っても過言でないほど、一般の人は知ってはいけないとされる事柄が多い―次世代に引き継がれている。学校教育は近代西洋医学をもって「医療」とみなし伝統医療を否定するが、人々の間では未だに伝統医療に対する信仰は篤く、病気になっても病院にはいかず、煎じ薬など伝統医療で治そうとする人も少なくない。そして、実際に、彼らは伝統医療によって治癒し、その後も元気に生活している。エボラ(ogodo)治療法も、西洋医学を全面的に肯定する立場からは一笑に付す話だろうが、一度その立場を離れ、アフリカ伝統医療を再評価する観点から眺めれば、そう簡単には否定できるものではないかもしれない。

なお、このような言い伝えのようなエボラ関連や煎じ薬についての話は、基本的に高齢の人からしか聞くことが出来ず、話してくれるのはいつも50歳以上の人たちである。エボラに関する若者の反応は異なっていて、ラジオやテレビで騒がれているエボラ出血熱の存在自体を疑っている人も少なからずいる。エボラ騒ぎは、「白人」がデマ情報を流しているのが原因ではないかと疑っている。実際、ベナンにエボラ患者は一人も出ておらず、身近にエボラにかかった人がいないため、エボラ出血熱という病気があると言われても、そう簡単には信じられないようだ。(ちなみに、エイズに関してもその存在を疑う声も時々聞く。「白人」がアフリカ文化を破壊しようとする陰謀ではないか、と。)
posted by 木村だっくす at 17:16| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。